シッポノリンカク

映画好きで絵描き好きな曖昧模糊な記憶。又は、自由闊達な解釈。或は、落書き。

ミルフィーユ仕立ての森

今週のお題「私のタラレバ」

 

冬の強い陽射の下、枯れ木の森を眺めて寒風に凍えた。

世界は森の落葉のような構造なのかもしれない。

刹那ごとに可能性が落葉のように舞い散り、幾重にも厚みを増す足下。人は、その森の結界を破り、選り抜きの落葉を拾い集められるとしたら、幹の梢に括り付けるのだろうか。

何だか後ろ向きだなぁ。見比べていたらキリがなさそうである。

森の落葉は小さな生き物たちの隠れ家になり、腐葉土として森を育てる。

新しい季節を期待したいな。

 

絵を描く構造も森に似ているんじゃないかな。

幾重にも、ためらい線を描いて素描する。無数にある色彩を紙やキャンバスの上に表現していく。一色ごとに、別の可能性は落葉へと枯れてしまう。その結果として1つの作品が出来上がる。

絵具が画面に吸い込まれた時、もうやり直しは叶わない。ただひたすらに色彩を表現するしかない。脳内で思い描いた通りの色彩が生まれるとは限らない。しかし、思わぬ色の調和に才能を勘違いすることもある。

無我夢中に色彩の虜になる。そこに存在する緊張感が作品に反映される。その緊張感は絵を描き、鑑賞する楽しみの一つです。

素描のように若葉で賑わう森や、色を塗り重ね、最後の一葉の美しさの森もあるのです。

絵を描き終える事は、可能性を残す事なのかもしれない。森の時間を止めてしまう事だ。制作衝動は、森の芽吹きの時。新しい画面を用意する事は、森の季節を新たにする事に思える。

 

しかし、デジタルで絵を描いたら、幾らでもやり直しができる。森の季節を取り戻す事が出来るのです。

でも、やり直しができるから傑作が生まれる訳ではない。結局、描く者が線を模索し、色彩を楽しんだ結果が存在するだけです。

 

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このイラストは、冬の軽井沢を舞台にしたドラマ“カルテット”第3話のすずめちゃんです。彼女のチェロに感動して描きました。目に見えた風景を描いた具象画です。

音楽は目に見えません。色彩や文字ではなく音で心情を表現します。音色でしか表現できない世界観が在り、音楽を聴く事によって心が震える事が在ります。

音が鼓膜を伝い、抽象的な記憶が刺激され、感情が溢れるのです。

描く事で音色や心情を表現できたら…、具象ではなく、抽象表現していれば…。

では、デジタルならではの方法で、ちょっとだけ抽象表現に挑戦してみます。

 

まずは線画まで戻ります。この時点で個人的な好みが反映されています。大きくガッシリしたチェロと対照的に、彼女の細長い美しさを描きました。

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さて、すずめちゃん自身の心情を勝手な解釈で抽象表現してみたいと思います。

彼女はチェロを抱き、奏でる事で居場所を見付けました。誰かに気兼ねする事なく、心のままに音色を楽しみます。とても悲しい過去に対して、音楽を奏でる事で心を解放していきます。ドロドロと重苦しく心の奥底に沈殿した感情を糧に、昇華する感情の発露が伝わってきます。それは熱っぽさに加え、喜びの感情です。その力強さに裏付けされた気高さが在ります。

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あっ。ちょっと情熱的に表現しすぎてしまいました。では、彼女の薄幸の美しさを加味します。

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次に、心情の音色を表現します。チェロの低音から感じる落ち着いた安心感と、ひっそりと潜む不安感です。

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更に、軽やかな羽毛で心の解放を描きます。すずめちゃんに羽毛の発想は安直かな…。さて、チェロの音色を感じるでしょうか。完成です。

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もう一つ別の表現として、春への期待を込めて明るめにしてみました。

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具象と抽象で3つのイラストが完成しました。

 

描こうとする一つの衝動から全ては始まります。描く過程での可能性は広大無辺ですが、その中間点は存在すると思うのです。そして、描き終えた最終地点は結果としての一つです。もしかすると、別の場所へ向かう中間地点なのかもしれませんね。

この抽象表現は、具象画を描き終えた時間の延長線上に在りました。

始まりと終わりは決まっているのかもしれませんね。その時間の中に中間地点が存在する。だから、出会う人とは出会い、別れる人とは別れてしまう。生まれてくるべきだから、必ず生まれてくる。辿り着くべき場所には、必ず辿り着く。例え、悲しい結末に向かっていても、複雑な時間の彩りを鮮やかにする事を楽しみたいと思います。未来に向けて、たられば…と期待する方が楽しくなりそうな予感です。

 

 

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