シッポノリンカク

映画好きで絵描き好きな曖昧模糊な記憶。又は、自由闊達な解説。或は、落書き。

爆破と絶叫とゾウと:100歳の華麗なる冒険

こんにちは。

 今回は映画〝100歳の華麗なる冒険〟のあらすじと感想を独断と偏見で、イラストと共に語りたいと思います。

 

 では、ここから作品のネタバレ注意です。

 

自分のパーティから逃げるなんて。

 雪の積もるある朝、アラン・カールソンは愛猫のモロトヴが鶏と共に殺されてしまう事を知る。モロトヴを見つけ悲しんだ感情は怒りへと燃え上がる。敵を討とうと、キツネに対しダイナマイトにウインナーを巻き付けて罠を仕掛ける。キツネが罠に掛るのを窓から眺める。眺め、待ち続ける。

 陽が落ちても怒りは燃え続けている。周囲は暗くなる。ついに、ウインナーに食いついたキツネを見つけ、電極を通して爆破する。

 鶏小屋と共にキツネは吹き飛ぶ。そして、彼は余生も吹き飛ばし老人ホームへ入居する事になる。

 アランは爆破音に誘われて、100歳の誕生日に窓から老人ホームを脱走する。冒険が始まる。その冒険の先々で起こる出来事からアランは人生を振り返える。

 

行先?そうだな…今はないな。そのうち分かるだろ。

 アランは、ギャングが冷凍庫に監禁され脱出しようと暴れる絶叫を聞いて人生を思い返す。その中で大層な考えが浮かんでも、なるようにしかならないのだと。

 アラン少年は爆破の魅力に好奇心を惹かれて人生が進んで行く。偶然にもアランの爆破実験に巻き込まれ幸福な男が人生を終えた事。その事で精神科病院へ入院した事。

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 そして、大砲工場への就職をキッカケに時代の戦乱に巻き込まれてゆく事。その動機は爆破だ。

 若かりし頃のアランは、食べて寝て爆破するのが生活の全てである。とにかく、この爆破シーンの連続が観ていて楽しい。爆破音と爆煙を合図に、破壊される数々の建造物。安定した構図がみるみる崩壊してゆく。アランの歓喜に満ちた表情、その心情を表現した音楽。とても戦争を表現しているとは感じない。爆破で死傷者が一人も出ていないからだろう。シュールなシーンとして戦争が描かれている。

 

どんな物も持ち主は変わる。

 その後、若いアランは爆破好きをキッカケに国を転々として行く。

 そして、100歳のアランの冒険は仲間を増やし、ゾウとも仲良くなる。アランは仲間と食事中に、またも人生を振り思い返す。人生では、事が事を呼ぶものだと。

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 人は一面だけみせて別人の顔も持っている。と、若いアランはロシアとアメリカの二重スパイになった事を思い返す。アランを軸に東西間をクズ情報や人々がすれ違う。

 アランは平然と言われた通りに業務をこなす。その周囲の人間は必死だ。重要な情報だと命を懸けて行動する。その対比がシュールだ。緊張感が張り詰めた情報戦を背景にアランは淡々たる色調で日々を過ごしている。

 しかし、音楽、構図と共にシーンの緊張感はスパイ映画の様だ。そのクオリティーの高さがシュールさに奥行をもたらしている。悲鳴と銃声が響き、時に銃弾に命を失う者もいる。

 スパイ行為で死者が出てもシュールさを感じてしまうのは、現実において実感が無いからだろう。日常で、スパイアクションはエンターテイメントとして存在しているからだ。

 

なるようになる。

 ナニがナニして、めでたい一件落着を迎える。

 

 アランの背景に登場する人物は必死に生きて絶叫をする。しかし、アランの激情は愛猫モロトヴを失った時だけである。

 アランは好奇心を持って爆破を学び、人々と出会い、人生を生きている。大きな野心は無く、その時その時の心のままに生きている。そうして、アランの周囲には悲しみだけでなく、喜びも生まれる。最後にアランも幸運に恵まれる。

 アランは、赤ん坊は絶叫する。そうするものさ。と締めくくる。人生に目標を持ち、計画的に生きる事は聞こえの良い事だ。その事を否定するつもりはない。だが、自分の好奇心を大切にして、良心を持って心のままに自分を解放して楽しむ事の素晴らしさを感じる。

 明日は違う風が吹くかもしれなのだ。何かに行き詰まり、考えが堂々巡りになってしまった時に肩の力を抜いて観たい映画でした。

 

【追記】

 12月4日にラジオ放送した、小林克也のFUNKY FRIDAYでの母親から学生の息子へのメッセージのやりとりがとても良かった。

 母親は画家を目指している息子に、応募作品が期限に間に合わなかった事に対して励ましのメッセージを寄せた。息子は同級生や先輩の画力に対し、自身の成長に焦りを感じているかもしれないが良い画を描けるようになったと、そして母親はこれからも期待しているとの内容であった。

 それに対し克也さんは、人には出番があるからね。と親子を励ました。

 毎週、ランキング方式でヒットソングを紹介し、アーティストの浮き沈みを肌身に感じてきた言葉に重みを感じた。

 出番といっても仕事や出世だけでは無いと思う。誰かを待ち、誰かを支え、誰かを守る事にも出番待ちがあると思う。

 向上心を持ってカラ回りしてしまう事がある。努力だけではどうにもならない事もある。少しでも余裕を持って生きる為に、良心を持って心に忠実でありたいと思う。

 なんだか、井上陽水の〝夢の中へ〟を聞きたくなりました。