シッポノリンカク

映画好きで絵描き好きな曖昧模糊な記憶。又は、自由闊達な解説。或は、落書き。

閉じた世界での喜び:銀座ハゲ天への憧れ

「行ってみたいお店・レストラン」by みんなのごはん
http://blog.hatena.ne.jp/-/campaign/gnavi201512

r.gnavi.co.jp

 

 

 薄い衣に透ける朱色が艶っぽい海老天。

 衣をまとわない上気した紅緋色の尻尾。

 鮮やかな赤が角膜を伝い、食欲を刺激する。胃の腑が震える。

 

 旬を贅沢するとしたら、天ぷらだ。

 天ぷらとは、素材に衣を付け、油で揚げた食品である。

 熱した油の中で、衣の水分は蒸発して油を吸い込む。この時、天ぷら独特の食感と香りが育まれる。新雪の野原を行く心地良さと芽吹きを感じた鼻腔。

 その衣の中で素材は、過度の加熱をさけながら熱を帯びる。蒸発した水分は衣から逃げ出すことが出来ない。よって、素材は衣の中で蒸される。ふわりと柔らかさを増し水分を含んで旨味を逃がさない。素材の香りと旨味の密室がそこにある。香り立つ湯上りに触れた、弾んだ抵抗の残る掌。

 油と戯れ、引き離す瞬間は特有の破裂音が合図らしい。天ぷら職人は客の賑わいの中、その音を聞き分ける。天ぷらが自己主張しているのだ。今が至福のひとときだと。

 熟練した者には最高の一瞬を知る事ができるのだ。

 そうして、鮮やかさを衣の下に隠し現れる。食事という行為は美的経験だ。

 ああ、天ぷらが食べたい。銀座でハゲ天の天ぷらを食べてみたい。

 

 今年の秋の事である。インターメディアテクへ向かう途中、KITTEにてハゲ天の鶏天弁当を食べた。美味しかった。

 鶏の美味しさに驚き、茄子がこんなにも甘いのだと知った。

 そうなのだ。天ぷらの主役は肉や魚だけではない。野菜も美味いのだ。

 野菜の香りと甘味を感じるなら、天ぷらだ。それらが衣の中に閉じ込められ、最高の状態で食される事を待っているんだ。

 ハゲ天の銀座本店で揚げたての天ぷらを食べてみたい。旬を楽しんでみたい。

 銀座で旬の天ぷらを楽しむ。美意識の集積された建築様式空間で季節を味わうのだ。

なんという贅沢だ。

 いつか、相応しい時が来たらと思う。天ぷらとの縁が結ばれる事を願う。

 

kimerateiru.hatenablog.com