シッポノリンカク

映画好きで絵描き好きな曖昧模糊な記憶。又は、自由闊達な解説。或は、落書き。

10歳の思い出。:シェフ 三ツ星フードトラック始めました

こんにちは。

 今回は映画〝シェフ 三ツ星フードトラック始めました〟のあらすじと感想を独断と偏見で、イラストと共に語りたいと思います。

 

 では、ここから作品のネタバレ注意です。

 

 眠くならない程に空腹を満たしてからの鑑賞をオススメする映画でした。

ブタが届いた。丸焼きだ!

 テンポの速い曲と共に、太った男が厨房で料理を始めている。

 男は手際よく鍋に食材を投下する。包丁の鮮やかな動きによって野菜は刻まれてゆく。飲物を喉に流し込み、手早く鍋を振る。フルーツも刻まれる。

 その後、レストランの料理人であるカールは、別れた妻との10歳の子、パーシーと一緒に市場へ買い出しに出かける。

 

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サティスファクションを聞けなかったら?

 フードブロガーの来店にカールは新メニューを考案する。しかし、支配人はいつものメニューを、皆が期待していると反論されてしまう。そして、いつもの人気メニューでブロガーと勝負する事になる。

 結果、フードブロガーに酷評される。

 しかし、カールはその事をバネに新レシピに情熱を燃やす。ツイッターで酷評ブログが拡散されている事も知らず、新しい味覚を追い求める。

 とにかくカールの料理に対する情熱が凄く熱い。リズミカルに食材を調理して、新しい料理を生み出す。音楽と共に、リズミカルな調理シーンを観ているだけで楽しい。

これも楽しいよ。昔に戻ったみたいだ。

 カールはパーシーからツイッターのやり方を教わる。そのやりとりでパーシーは喜びを感じる。何気ない日常の中にパパが居る喜びを語り、両親の復縁を願う。

 このシーンで食べてるチーズサンドがスゴく美味しそうなんだよ。溶けたバターでカリカリのトースト、サンドしたチーズが柔らかくトロ~ンって伸びて食欲をそそられる。

 そして、カールはしたり顔を浮かべ、ツイッターで反撃に出る。

 結果、炎上である。

 更にカールは好戦的になり、再戦を挑む。

芸術家をやるなら他でやれ。

 再戦に興奮するカールだが、またしてもカールの新メニューは却下される。支配人はリピーターを大切にしている。いつもの味を楽しみにしているお客様を、フードバトルの戦場に巻き込むわけにはいかないのだ。そして、カールは調理場を去る。

 カールは冷めやらぬ熱を料理に昇華させる。自宅で悶々と調理する。一方、カールの居ない厨房は混乱しながらも客に満足してもらおうと必死だ。この2つのシーンが交互に演出されている。情熱と定番メニューのコントラストによって、それぞれの価値を感じる事が出来る。

 レストランでは1人のフードブロガーを除いて皆が食事を楽しんでいる。

 革新と定番は人の求めるモノであるが、背中合わせである。革新を求めるカールは、今の状況に満足していない。それに本人は気が付いてない。しかし、別れた妻はそれに気付いている様に思える。多分、ウエイターとの嫉妬も混ぜこぜなんだろうが会話に出さない。

こっちは必死でやってんだ。

 カールはレストランの表口から現れる。食事しながら酷評するフードブロガーに対して怒りの口火を切る。大勢の客の前で、怒りの全てをフードブロガーに叩きつける。周りは騒然として動画を取り始める。

 結果、大炎上である。

 ネット上では、あらゆる方向から燃料を投下され、轟々と燃え上がる事を眺めることしかできない。パーシーのタブレットには、支配人になだめられ、うなだれながら退場するパパの姿を映している。

 とにかくこのシーンは切ない。カールの情熱はネットの悪意に嘲笑されてしまう。その情熱が熱いほど、悪意が増幅される。食事を楽しもうとする気持ちを欠落した孤独が中心にある。その孤独は冷ややかに被害者面である。創作の喜びを知らない寂しさを根に感じる。

 カールとブロガーは同じ肥満体型である。食事量の為だろう。カールは新しい味覚を求め、ブロガーは味覚を熟す事での結果だろう。同じ結果であっても質の違いに差が出ている。

これまで常に目標があったのに…

 カールはパーカーと別れた妻と3人でマイアミ旅行に出る。この事が彼らの大きな転機を与える。キューバサンドをきっかけにフードトラックを始めようとする。

 カールは夏休み中のパーシーと中古のフードトラックを磨き上げ、かつての同僚マーティンと旅にでる。行く先々でサンドを売りながらロスへ帰る旅。

 その旅でカールはパーシーに料理に対する姿勢を伝え、パーシーはSNSを使ってフードトラックの宣伝をする。

 結果、行く先々でお客の行列が出来る。

 かつて、カールを苦しめたSNSはパーシーの活躍によって喜びを与えるツールへ変化した。食材と同じである。活かし方の違いで毒にも薬にもなる。この演出が事の本質だ。どんなモノにも活かし方があるのだ。しかし、カールはまだ修復できる家族に気が付かない。

たぶんオッケーだ。

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 旅は終わり、カールはパーシーからの動画を観ている。パーシーの夏休み中を1秒動画で編集したものだ。人々との絆が圧縮されて再生される。カールは微笑み、目元が緩む。

 夏休み中、パーシーはパパとの行動で大きく成長した。コーンスターチの意外な使い方も学んだしね。そして、それ以上にカールは成長した。パパとして、料理人としての誇りを取り戻し、懐が大きくなった様に感じる。

 時々に、人には在るべき所があるのだと思う。踏ん張りが利かなくなる程のストレスを感じたら、そのサイレンなのかもしれない。強制退場もある。でも、それは次へのスッテップにしてしまえば良いのだ。生でバリバリ食べるのが野菜の在り方とは限らない。熱を通して柔らかく、甘味を増す事もあるんだ。ピクルスの様な漬物だってある。

 そう。これはフードムービーである。所々に出てくる料理に空腹を刺激される。盛り付けられた料理に鮮やかさがある。赤や黄色のソースが色彩に華やかさを加え、料理が抽象絵画である様に惹きつける。心が感じる色彩だ。料理でありながらも、芸術を感じる。

 それは、調理する者と食事する者との関係性から育まれる美意識だろう。

 だから、カールがウエイターの娘に調理したパスタから色気を感じたのかもしれない。