シッポノリンカク

映画好きで絵描き好きな曖昧模糊な記憶。又は、自由闊達な解説。或は、落書き。

冬の14歳:ヱヴァンゲリヲン新劇場版1.01~3.33

以下、ネタバレ注意です。

 

絆だから。

 部屋の外は木枯らしが吹いている。外になんか出たくない。

 TVの録画HDDを整理していたら、観忘れた旧エヴァの再放送がある事に気が付いた。

 夏にリマスターの販促用で放送したものだろう。

 エヴァを観るなら夏だ。蒸し暑い焦燥を感じる物語だからだ。生は熱気で勢いよく、その熱気は死にも勢いを与え、湿気と共に朽ちる。その季節の中で少年少女は生きる。

 しかし、今は冬だ。寒さで縮こまる季節である。能動的な季節は過ぎ去り、受動的な季節が支配している。それでも好奇心は再生を望む。何年ぶりかに旧エヴァを観た。

 良かった。まるで、遠い夏の思い出のように懐かしさを感じた。

 でも、旧エヴァの壱話と新ヱヴァの序とは異なった印象をもった。

 何だろう。新ヱヴァも観たい。この違和感は何を訴えているのだろう。

 赤い海。墓標の様に突き刺さる列車。使徒のナンバリング。巨大生命体の痕跡を残した山の斜面。旧エヴァとは違う世界だが、それらが印象を変える決定的な違いじゃない。

 旧エヴァで、14歳の碇シンジが初号機に搭乗シーンで高揚した。そうだ。新ヱヴァと見比べて気が付いた。やはり、そのシーンに大きな違いがある。

 それは、エヴァインターフェイスを無しに動くのだ。旧エヴァでは使徒が襲来し、搭乗に困惑するシンジの頭上に照明機器が落下する。その時、エヴァは奇跡の起動を見せる。エヴァは右腕を動かし、照明機器を跳ね返してシンジを守る。その照明機器は、搭乗を迫る父へと向かう。強化ガラスに守られた父は不動のままに、ほくそ笑む。その奇跡で少年の心は自信を身に付けた様に感じる。

 

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 このシーンは、シンジの決意を魅せる。シンジの搭乗困惑に代理として、包帯の少女であるレイが呼び出される。少年は少女を守る為にエヴァ搭乗を決意する。

 これは、父と母が息子の決意に関わるシーンなのである。母である初号機が、奮い立つ息子に触れ合う事で自信を与えるのだ。

 しかし、新ヱヴァでは母との触れ合いは無い。少年は搭乗して戦わなければと、より孤独の中で決意する。

 その結果が、次第に壊れていく碇シンジの物語に大きな違いを生むキッカケの様に感じる。

 

大人の都合に子供を巻き込むのは気が引けるなぁ。

 旧エヴァの拾九話と新ヱヴァ破でもシンジの決意は大きな違いを魅せる。

 旧エヴァでもシンジはエヴァ搭乗に困惑する。その時、加持と触れ合い、少女達の覚悟を目にする。自信を取り戻し、シンジは慢心と狂気で使徒と戦うがエヴァは活動限界をむかえる。そして、少年は困窮と懇願の末に奇跡を起こす。みんな死んじゃうのはイヤなんだよ、と心の叫びを吐露する。

 新ヱヴァでも同様に加持との触れ合いは無い。残酷な結果を突き付けられ、少年は孤独に搭乗を決意する。

 しかし、活動限界をむかえたシンジは誰にもすがらない。レイの為だけに静かに激情する。そして、世界の危機を招くのだ。

 

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 人は簡単に変われない。同じ過ちを犯し、同じ場所に戻ってしまう。でも、変われるかもしれない可能性が劇中に在る。

 

 自身は社会に擦れて、喜怒哀楽が薄くなってしまった。

 他人には他人の生き方があると言い聞かせ、他人に深く関わらない様にと愛想を学んだ。

 社会的立場を考慮して、正面から他人と向き合えない。

 それが大人の振る舞いだと思う事がある。

 

 それでも、自身の内に在る14歳の自分は感化される。シンジの困惑に立ち向かう足掻き。アスカの健気な強がり。レイの献身的な身の振り方。若さ故の真摯が在る。

 若さを糧にして他人と向き合う事は、貴重な経験になると思う。友情なり恋愛に身を焦がす事は良い事だ。黒歴史になってしまっても、真剣に他人を想う事が出来る可能性も残る。見返りを求めない想いがあるんだ。相手を支配しようとする巧妙さなど無い。

 人は孤独と向き合う事で成長する。孤独を紛らわす一方的な都合で、他人を束縛する虚しさに気付く。

 そして、やっぱり希望は自身の外から感じるのだと思う。

 

イイよ、まかせて。動くようにすればイイんだね。

 又しても、ヱヴァQでシンジはカヲルの死に直面する。旧エヴァではカヲルの命の采配はシンジにあるが、新ヱヴァでは彼の死を受け入れる事だけになる。能動的な死と受動的な死。その償いの差はどんな結果をもたらすかはまだ分からない。

 

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 でも、ラストシーンに感動した。ピアノの音色と共に赤い大地が広がり、雲の動きに風を感じる、青空を覗く。赤い大地が死、白い雲は未知の可能性、青空は希望、そう感じる。3人の未来を暗示している様に思う。たくさんの犠牲を糧に少年少女達は生きる。わずかな可能性と希望に向かって前に進んで行く。その背中はもう小さい。

 改めて、庵野秀明監督作品で感慨にひたった。ヱヴァの新作を望む声は多い。個人的には完成までに何年かかっても良いんじゃないかと思う。監督の心の解放を感じる事の出来る作品になる事を願う。