シッポノリンカク

映画好きで絵描き好きな曖昧模糊な記憶。又は、自由闊達な解説。或は、落書き。

渾身で、弱く優しく。:さよならドビュッシー

以下ネタバレ注意です。

 

 映画“さよならドビュッシー”は、少女の奏でるピアノの音色に惹きつけられる。

 少女が奏でるピアノに込められた想いと優しさを知る事で、芸術活動という本質を考えさせられる。正確である音は鍛錬の賜物であり、奏でたい気持ちこそ音色を息衝かせるのだと思う。

月の光…

 いとこ同士の遥とルシアは幼少から生活を共にする。資産家の祖父の下で遊び、学び、ピアノを奏でる。成長した2人はお互いに夢を持ち、遥はピアノをルシアは看護を志す。

 2人は未来を語る。ルシアはピアニストになった遥に弾いてほしい曲がある事を語る。ピアノを演奏する遥に大勢の客が視線を送り、遥はルシアの為に曲を奏でる。そんな未来をルシアは想う。

 その夜、祖父の就寝する建物が火事になる。助けようと2人は祖父へと向うが火事に巻き込まれてしまう。

 

…弾きたい曲があるんです。どうしても…

 そして、焼け跡から奇跡的にも1人だけ生き残る。

 火事で生き残り全身に火傷を負い、皮膚移植と整形で包帯姿になり意識を戻す。顔の包帯がとかれる。その時現れた遥の顔には縫い目が見えない程に完璧な治療を施されるが、全身のリハビリが必要となる。ピアノを弾くまでには過酷なリハビリが待っている。

 火事で生き残った少女は祖父の遺言を知り、ピアノ教師の岬洋介と出会う。そして、ピアニストを目指す。

 

…どうしても月の光が弾きたいんです。

 彼女はリハビリを兼ねたピアノ演奏をきっかけにコンサートの出場を決意する。

 ドビュッシーの“アラベスク”と“月の光”の練習に熱意と焦りを見せながら、岬洋介に導かれる。ピアノの修練と共に2人の絆が生まれる。

 

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…わたし、

 コンンサート当日に彼女の指は動かなくなる。本番前に楽屋で岬洋介と語り合い、彼女は積年の懊悩を吐露する。ピアノ演奏に込めた想いを言葉にして舞台に立つ。

 コンサートでのピアノ演奏は素晴らしい。

 1曲目のアラベスクは、演奏と共に幼少からの回想が流れる。遥とルシアの表情から2人の絆を感じる。誰の為に奏でるピアノの音色か伝わってくる。

 2曲目の月の光では、回想をきっかけに演奏するピアノの周りに亡くなった人々が彼女を見守る。見つめ合う遥とルシア。絆で結ばれた人々が彼女の成長に微笑む。しかし、演奏の後半に彼女の体は限界をむかえる。それでも渾身で演奏する姿に感動する。何の為に奏でるピアノなのか、その想いがそこにある。絆で結ばれた人々の為に彼女は生きている。

 

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 演奏を終え、拍手喝采に包まれる彼女の笑顔が印象的だった。恐らく、この後に起こる彼女の懺悔は周囲の人々を困惑させ、悲観させるだろう。その事でたくさんの悲しみが生まれてしまう。それでも彼女は強く生きていけるのだと思う。岬洋介もそばにいてくれるはずだ。そして、エンドロールに流れる曲の歌詞からも救いを感じられる。

 懊悩の種であるドビュッシーの曲を弾き、さよならを感じられたのなら、絆の為に前向きになれると感じる。彼女の生きる強さと人を想う優しさにも惹きつけられる映画でした。

 

 監督をされた利重剛さんは俳優の顔も持っています。俳優としても色々な作品に出ているので、気になる方は画像検索してみて下さい。多才な方だと思います。

 利重剛のHP【利重人格】では写真やエッセイもあり、映画とは違う感覚を楽しめると思います。