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シッポノリンカク

映画好きで絵描き好きな曖昧模糊な記憶。又は、自由闊達な解説。或は、落書き。

先生はカンパネルラのように、:幕が上がる

ドリーム

以下ネタバレ注意です。

 

 映画“幕が上がる”は、ももいろクローバZの5人が主演の映画だ。しかし、モノノフたちが観るアイドル映画だと決めつけないで観てもらい映画です。

 ももクロをはじめ、この映画に関わる人々が真剣に楽しんで制作している事が伝わってくる。小ネタが多いのだ。ももクロに関わる人々の登場から、アイドルじゃない彼女たちの平行宇宙の可能性のようにも思えてくる。

 

捨てるな!燃やすな!

 夕方、看板の警告を無視して演劇小道具を燃やす高橋がいる。ほかの仲間が駆けつける。サマーウインタータイムマシンブルースの脚本が燃えている。両腕にポリタンクいっぱいの水を持参して、後から駆け付ける男性。その男、演劇部顧問の溝口は小道具の石槍でカンチョウをくらう。そういう役割の男なのだ。

 そして、新しい高校演劇部の部長に高橋が決まる。

いやぁ。そもそも勝ち負けじゃないわよ、美佐子さん。

 新学期が始まる。高橋の演劇は情熱と裏腹に人を惹きつける人気がない。しかし、静かに視線を送る者もいる。女性の美術新任教師の吉岡先生がその人である。

 高橋は迷いの中にいた。演劇部を盛り上げたい、でもどうすれば良いか解らない。頼れる人もいない。もう、部活やめたい…。

 その時に吉岡先生が高橋に演劇の提案をする。自信を無くした高橋は吉岡先生に反発してしまう。吉岡先生は大人の対応をする。試しにと即興で演劇を始める。髪を解き、窓を開け、風を演出に取り込み自分語りを始める。教師ではなく演劇女優の姿がそこに現れた。その逆光の女性は、母の真面目さ尊さを語る。

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 その出来事に高橋の演劇熱は再び高まり始める。更に吉岡先生はかつての学生演劇女優である事を知る。そして、高橋の熱気は吉岡先生を演劇部に巻き込む。

さぁ。行こうか。

 高橋は吉岡先生の演劇稽古の感想に共感する。共感する事で演じる事よりも演出家としての眼が養われていく。高橋は演出家として部に貢献する事になる。部員の役者を活かすも殺すも演出家しだいだ。

 そして、吉岡先生が提案した演劇は高橋の演出で成功する。演劇部に自信と熱が高まる。

行こうよ。

 吉岡先生は高橋に問いかける。高校演劇を勝ち負けで考えてどこまで勝ちにいくか。受験と折り合いがつかず、人生を狂わせるかもしれない。それでも演劇を貫くのかと。

 黙り込む高橋に吉岡先生は演劇熱を垣間見せる。

さすがに銀河は見えないけどさ。

 高橋は全国大会を目指し脚本を書き、演出を練る。銀河鉄道の夜を演じる事を高橋は決意する。その後、吉岡先生は出張を理由に不在がちになる。高橋は演劇部を導こうと迷うたびに吉岡先生にすがり、思いを寄せてしまう。そして、演劇大会の予選を通過して全国大会の出場へと近づく。

 しかし、吉岡先生は先生を辞めてしまう。吉岡は役者になる事を決意する。

 

 誰よりも演劇の熱に悶え苦しんだのは吉岡だ。演劇に挫折して決別したはずの想いはくすぶり続けていた。若き純粋な演劇熱によって再びその想いは燃え上がってしまった。見守り続けてくれた母に、信頼を寄せてくれた生徒たちに背を向け、己の情熱を頼りに進む吉岡の想いに胸を打たれる。

 一時、吉岡は燃え上がった想いを高橋たちの演劇部に託したと思える。家族を安心させるために教師を続けながら、誰かの想いを燃やす事で己の熱を忘れたかったのかもしれない。

 そうする事で周囲を安心させ幸せにする事ができたかもしれない。

 それでも、吉岡は情熱に対して、忠実に行動した。それほどまでに情熱は魅惑的で、恐ろしい。

 予選を通過した時に皆が歓喜した。その中、拍手で祝福する吉岡先生に差す影が印象的だ。もう、これ以上みんなで前に進めない悲しみが喜びより大きかったのだろう。喜べない悲しみを観ている事が辛い。

 それでも、高橋たち演劇部は進む。

 

 家族に囲まれ喜びをわかち合いながら舞台に立つ演劇部の彼女たちと、家族に背を向け孤高に緊張した吉岡のコントラストが作品の印象を強く表している。

 

 もし、ももクロの演技に興味を惹かれたら“幕が上がる、その前に。”も観てもらいたいと思います。この映画のドキュメンタリー作品です。アイドルから女優への葛藤と歓喜をスタッフと共に楽しんでいる事が伝わってくる。ももクロの彼女たちが人々を惹き込む不思議な魅力を目の当たりにしました。エクボは恋の落とし穴だね。

 

 そして、“銀河鉄道の夜”も合わせて読んでみる事で、この映画の世界観が広がると思いますのでオススメします。

 宇宙は加速膨張している。同様に、世界も人の心も。解り合えたと思えた人の心も、次の瞬間にはもう見失しなっている事がある。だから、深遠の世界で温もりに触れた時、喜びが生まれるのだろう。だから、温もりを求めて前進するのだろう。

 

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間接的なカンチョウからも温もりを感じられるのだろうな。…たぶん。

 

kimerateiru.hatenablog.com

 吉岡先生の作画制作過程です。よろしければ、こちらも覗いてみて下さい。