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シッポノリンカク

映画好きで絵描き好きな曖昧模糊な記憶。又は、自由闊達な解説。或は、落書き。

たのしいことば:小説・円卓

コメディー 社会

特別お題「青春の一冊」 with P+D MAGAZINE
http://blog.hatena.ne.jp/-/campaign/pdmagazine

 

※以下、ネタバレ注意です。

 

リズムの楽しい言葉がある。言葉の印象は物事を連想させる。そんな言葉の魅力に取りつかれた小学三年生、渦原琴子。通称こっこが幼馴染のめがね男子、ぽっさん、と過ごす夏休みの成長が西加奈子さんの小説“円卓”でコミカルに描かれている。愉快な言葉で展開される出来事に、好奇心でページを次々と開きたくなってしまう。

 

こっこは孤独に憧れて病人の人真似をする。その事で周囲からの違和感を「なんでじゃ。」とぽっさんへ問いかける。こっこは真似される相手を傷付ける結果に困惑してしまう。

悩みを打ち明けられる相手がいる事は幸せな事だ。小三の男女が真剣に心の違和感を語り合う描写に嫉妬してしまう。

弱さを曝け出してしまう事で、相手に負担をかけてしまうと感じ、飲み込む言葉が沢山ある。そういう言葉が少しずつ心に積もり、気付いた時には心の壁を形成しているのだろう。心の壁は見る事ができない。相手が感じる事で大きさを示す壁だ。

その壁をこっことぽっさんから感じる事はない。互いの言葉は素直で純粋だ。語り合う事で二人は物事をどう受け止め、どう行動するべきかを探していく。

そして、こっことぽっさんは、相手の気持ちを想像する事を知るのだ。

読んでいると思春期を迎える前へと回帰したくなってしまう。

 

その後、友だちを励ましたいと思った時に、こっことぽっさんは沢山の言葉を使う。

赤という言葉から連想する色は人それぞれ違う。それは明るさや鮮やかさが違うからだ。その赤から連想する物も違う。うさぎの目の赤もあれば、夕焼けの赤もある。

それでも、言葉で赤と伝えようとすれば色味の印象が伝わる。言葉とはとても面白い。

さらに、言葉から感情をも連想する事がある。言葉で感情を伝えようとする事ができる。こっことぽっさんは一緒に行動する事で沢山の言葉を知り、沢山の感情を芽生えさせてきた。二人が選ぶ言葉から、世界には喜びが溢れている事に気が付かされる。その言葉は二人の世界そのもだ。

読み終えると、強い回帰願望から、今生きている世界に対して楽しさが生まれてくる。

 

この小説は映画化されている。映画の素晴らしさから小説を読み、改めて言葉の面白さを感じました。映像でしか表現できない世界があり、言葉だから思い描ける情景がある。この小説は人を想う言葉の優しさに満ちています。

 

もしよろしかったら、こちらもどうぞ。映画“円卓”の感想です。

 

kimerateiru.hatenablog.com

 

監督・行定勲さんの画作りと、主演・芦田愛菜さんの活きの良さが映画の見所です。

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