シッポノリンカク

映画好きで絵描き好きな曖昧模糊な記憶。又は、自由闊達な解釈。或は、落書き。

南仏よいとこ一度はおいで。:マジック・イン・ムーンライト

 

以下ネタバレ注意です。

 

映画・マジック・イン・ムーンライトは、1928年頃の南仏を舞台に描かれている。マジシャンの男、スタンリーが、富豪に取入る女占い師ソフィのオカルトを見破ろうとする話だ。富豪はソフィの霊能力で幸せ一杯なのだが、スタンリーはそんなペテンは認めなとオカルトのタネを明かそうと必死にソフィを見張る。そんな出来事の末に二人は恋に落ちてしまう。

 

スタンリーはマジックショーで優雅にゾウを消し、瞬間移動をサラリと観客に魅せつける。しかし、内心ではテンポや合図のずれに焦り、憤っている。

まるで恋煩いの描写だ。恋に落ちたら平然と微笑んでいてもソワソワと落ち着かない。暴走する感情を理性で取り繕っているだけで精一杯なのだ。彼の未来を暗示しているみたいだよ。

 

この映画は観ているだけで心地良いのだ。男女が恋に落ちる様子を眺め、時代の音楽と風景を楽しむ。南仏の気候に惹かれ、創作活動をしたピカソゴッホルノワールたちの眺めた光がそこにある。世知辛い環境を忘れて、その世界に浸る喜びがあるんだよ。

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この映画では、人が恋に落ちるキッカケは一目惚れであり、その想いを膨らませる好奇心が描かれている。恋とも知らずオカルトを見破ろうとするスタンリーの熱心な好奇心に、ソフィはイタズラな笑顔を浮かべる。そのやりとりが二人のかけがいの無い時間へと変化する。

 

そして、富豪からソフィへのプロポーズをキッカケに、お互いがお互いの未来を思い描きすれ違ってしまう。

財産が多ければ、理性の求める物質的幸福は容易に満たされる。しかし、感情が求める精神的幸福は好奇心と共に2人が共有した時間の中からしか見つけられない。相手の趣味嗜好を理解して互いに相応しい未来を思い描く優しさは、2人だけでしか分かち合えない幸せなんだ。2人とも恋人の笑顔が何よりも幸福の証である事に決断できない。

その後、自由な感情は理性に勝り、世界を幸福に変化させる心のタネ明かしは魔法にかかったからだと描かれている。でも、ゾウを消す方法や瞬間移動のタネ明かしは解らないままだった。物理的トリックは謎で、心理的トリックを明快に描かれている所が面白い。

 

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爽やかなハッピーエンドだった。しかし、現実は心の衝動を“魔法”として行動してみても、みんなが幸せになれるとは限らない。この映画でも、2人の幸せの裏で傷心した人々が想像できる。

秩序を求められる社会で悪質な背徳の恋の魔法にかかってしまったら、忙しさの中で忘れてしまうのが良い。それでもダメなら、海で叫んだり汗だくになるまで走れば良いのだ。心の葛藤を体で発散してしまえと思う。あぁ、ステキな魔法がAmazon.co.jp で売っていれば、みんな幸せになれるのにと思うのだ。