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シッポノリンカク

映画好きで絵描き好きな曖昧模糊な記憶。又は、自由闊達な解説。或は、落書き。

赤いウレイと緑のイカリ:アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン

アニメ・特撮

 

映画、アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロンでは、トニーの憂いから生み出される力の存在を描いている。

最も印象に残った存在はハルクバスターだ。アイアンマン、トニー・スタークとハルク、ブルース・バナーの憂いから開発された。怒りで制御不能のハルクに対する抑止力である。

 

劇中、緑の怒れる肉体であるハルクはスカーレット・ウィッチに操られて街で暴れだす。彼をなだめるブラック・ウィドウも戦闘で傷付き動けない。唯一、健在のアイアンマンが街へと飛び立つ。

アイアンマンはヴェロニカの召喚をする。衛星上から青い地球へ投下される赤いヴェロニカ。ココで次のシーンへ切り替わるので、何が始まるのかと期待が高まる。

 

そして、街での混乱に対処する警察車両からの視点で新しいシーンが始まる。街角を曲がった瞬間に現れる緑の怪物。こちらを発見するなり跳びかかって来る。車両に着地して屋根を引きはがし咆哮する。ホラー映画の手法だ。

 

ついに上空にヴェロニカの姿が現れる。青空に白煙の軌道を描き落下して来る。ヴェロニカは飛行するアイアンマンに装着パーツを次々に射出する。おう、この燃える展開。

上空ではSFを、地上ではホラーを描く演出の対比が好奇心を煽ってくるのだ。

 

ヴェロニカとは、ハルクバスターを搭載したアイアンマンの支援ドローンだ。絶えずアイアンマンの後方で支援に備える。

名前の由来はブルースの恋人からの説がある。しかし、十字架を背負いゴルゴダの丘へ向かうキリストへと額の汗を拭くために自身のベールを差し出した女性、聖ヴェロニカのようにも感じる。

気まぐれにトニーが女性の名前を付けただけかもしれない。…ピーキなエンジンを搭載した流線型スーパーカーへ女性の名前をつける男の気性が伺い知れるんだよなぁ。

 

その後、地上ではハルクに対して警察が銃撃戦を繰り広げている。ハルクに銃撃などは足止めにもならない。ハルクの反撃は、軽々と車両がダンボールを蹴飛ばされるように警察隊達に飛んでくる。

ハルクが警察隊に跳びかかろうとしたその時、進路を銀色の物体が妨げる。金属が次々とハルクの周りを囲み、檻へと形成していく。抵抗するハルクに金属は電撃を放つ。四方、上方を囲まれハルクは沈黙する。金属の檻を中心に物静かに警戒する警察隊と混乱して逃げ惑う人々が描かれる。

そして、檻に遮られハルクの籠った咆哮と地響き。土煙と共に檻は地中へと沈み、再びの沈黙。正にホラーの演出だ。突如として、恐怖が始まる予感が満てくる。

 

その期待を裏切る事なく、轟音と共に地中からハルクが現れ、叫び、暴れる。

そして、緑の怪物の手前に赤い機体の足が現れる。アイアンマンMr44が形成されていく。対ハルク決戦アーマーのハルクバスターだ。ガチョンガチョンとアイアンマンへパーツを装着合体していく。足元からその姿を現し、最後にアーマーの頭部が現れ、目が青く発光する。熱い演出である。日本のロボアニメに求める演出が、マーベル映画で演出されると一味変わるものだ。実写とCGの組み合わせの臨場感が凄い。カチカチと細部が動く仕様がメカニック魂を刺激される。

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上空で待機するヴェロニカ越しに街中で対峙するアイアンマンとハルクのカットが写し出される。さぁ、これからココで一暴れしますよというカットだ。緊張感の演出と共にフィールドの説明がされている。この描写でさらに臨場感が増すのである。

 

手始めにハルクは片手で軽々と車をアイアンマンに投げつける。喧嘩の挨拶なのだ。車を受け止めるアイアンマンのカットが映る。この投げつけられた車でアイアンマンの大きさとパワーが伝わってくる。さりげない演出で重量感を伝えてくる。

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更に、ハルクは車越しに追い打ちを仕掛ける。突き飛ばされるアイアンマンはリアクター全開で体制を整え、反撃に移る。ガッと画面の奥に飛ばされて、ゴウっと手前に飛んで来る。画面の奥行を利用した演出である。この演出でアイアンマンの可動部分とリアクターの出力が想像できる。メカメカしい熱さ全開である。見た目の重量感と可動スピードのギャップに圧倒的な高性能を感じる。それと同時に、対等に張り合うハルクの能力にも目が行く。

 

もう、ここからバトルは加熱するばかりだ。ハルクは背後から奇襲をしかけ、アイアンマンは左腕を負傷する。背後に取りつき暴れまくるハルクを、たまらずアイアンマンは反撃で突き飛ばす。市場に落下するハルク。悲鳴をあげ逃げる人々。怒りの炎に油を注がれているかのようなハルクはアイアンマンへと市場を破壊しながら走り出す。アイアンマンはハルクを鎮圧したいのか暴れさせたいのか分からなくなる。力ある者が衝突した時、平穏に暮らしていた人々が予期せぬ不幸を被る描写が画面から滲み出している。

 

ガッチョンガッチョンとアイアンマンの負傷した左腕パーツの脱着が始まる。ヴェロニカから左腕のリペアパーツが射出される。猛進して来るハルクに対抗できるのかと危機感が高まる。

アイアンマンは近づかせまいと右腕からパウッとビームでハルクをけん制する。左腕の修復と右腕の攻撃。攻守一体の体制が燃える。

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左腕修復完了っとの瞬間に、アイアンマンの左拳とハルクの右拳がぶつかり合う。衝撃波が近くの物を破壊し、逃げ惑う人々を吹き飛ばす。力の衝突による魅力と脅威。

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パーツの脱着音、ビームの発射音、拳衝突の衝撃波音のリズムが良い。テンポ良く力がぶつかり合い、戦闘熱を加熱させる。しかし、その周りで恐怖する人々の悲鳴が戦闘を否定している。

圧倒的な力への憧れと、力を解放させた後の残酷さ。そのコントラスト。それが赤と緑の印象と共に強く残る。2体がハイスピードで街中を暴れまわる演出なのだが、赤と緑の補色関係が目で追いやすい。補色とは互いの色を引き立たせる相乗効果だ。

その後の戦闘は、力の消耗と破壊被害の拡大であり。被害者の溜息と瓦礫の沈黙だ。力ある者が持つべき自制心を無言で語っている。

 

アベンジャーズの映画は、登場するヒーローの原作を知らなければ全てを楽しむ事は出来ない。しかし、ヒーローの魅力を、力の在り方を描こうと、劇中から感じる事が出来る。

ラストのヴィジョンとの会話から感じるウルトロンの哀愁もたまらなかったです。父から肉体を与えられた者と、奪い上げられた者の対比が切なかった。どんなに優秀でも父を脅かす者は存在できないのだと。