シッポノリンカク

映画好きで絵描き好きな曖昧模糊な記憶。又は、自由闊達な解説。或は、落書き。

ふたりの色彩:少女革命ウテナ 29話

今週のお題「雨の日グッズ」

 以下ネタバレ注意です。

ワイパーの音が印象的なシーンがある。

その作品は、テレビアニメ、少女革命ウテナの29話に描かれている。

少女革命ウテナは、超現実的と抽象的なアニメ演出で御耽美な世界観を描き、実に間口の狭い作品だった。しかし、その奥深さは計り知れない。その趣向ゆえに色々と話題になり、映画化になった印象がある。

真っ赤なスーパーカーのボンネットの上で、半裸になる褐色の学園長が微笑む作品なのだ。万人受けしてはいけない作品である。だが、その偏った美意識がたまらない。憎めないナルシズム変態演出の間抜けさと深刻さは圧倒的なのだ。リアルタイムで鑑賞していなかった事が悔やまれる。毎週、感性の暴走を楽しみにできたはずの作品なのに。

 

この作品は学園アニメで、薔薇の花嫁を決闘で奪い合う事が大筋にある。決闘は、胸に差した薔薇を剣で落とした者が勝者である。その剣は胸から取り出す事で現れる。恐らく懊悩の象徴が剣なのだ。心を貫き、痛みの根源を手に決闘に挑む。故に、剣を取り出す者も限られている。懊悩に寄生した者が必要になるのだ。

ここまでサラリと解説してみたのだけど、ほとんど何も伝わってない気がするので興味ある方は作品を鑑賞して下さい。時間を閉じ込めた心象風景の日常と表現するべきか、超現実な世界観なので映像の力を感じる作品です。

 

29話は28話と共に構成されている。男子学生、瑠果(ルカ)と女子学生、樹璃(ジュリ)と枝織(シオリ)の一方通行な三角関係の話である。主人公であるウテナの登場は少ない。

まず、28話「闇に囁く」では樹璃の懊悩を瑠果があぶり出す。樹璃の一途な想いは胸のロケットペンダントの中にある。その中には枝織の写真が忍ばせてある。それを知りながら瑠果は、偽物の献身で言い寄ってくる枝織と恋人関係になり、あっさりと捨てる。

その事で樹璃は瑠果に対して感情的になる。恐らく、題目の闇とは、樹璃の心でうごめく百合感情なのだと思う。樹璃の気高さ故に感情は闇へと歪み、心を蝕むのだ。その事に瑠果は想いを募らせ行動したのだろう。

作品の中で影絵のシーンがある。この影絵が抽象的で面白い。釣りをしている少女達は魚を釣ることができない。沢山の魚が飛び跳ねる場所でゲタやヤカン、タイヤなどが吊り上げられる。結局、誰ひとりとして魚が吊り上げられない残念な結果を喜劇で演じている。この演出でシリアスになり過ぎず、悲劇と喜劇のバランスが心地好い。

 

29話「空より淡き瑠璃色の」では、瑠果が樹璃の剣を取りだし、樹璃とウテナを決闘させる。瑠果が樹璃の懊悩を取り出し、向き合わせる構図である。瑠果のサポートで樹璃はウテナより優勢に闘いを進める。しかし、ウテナの一撃で樹璃のペンダントが胸から空高く飛び散る。でも、まだ胸の薔薇は散っていない。まだ闘いは終っていなのだが、樹璃は胸の薔薇を握る。薔薇は床へと落下する。雷鳴と共に雫が落ち、束の間にどしゃぶりの雨に変わる。茫然と雨に打たれる樹璃に瑠果は声をかける。

そして、雨を拭うように車のワイパーが動き出す。瑠果と樹璃の背中。その静かな空間に聞こえる雨音とワイパーの音が印象的なのだ。雨は樹璃の葛藤であり、気高さと想いを幾度も拭っている様に感じる。

 

その後、樹璃の手紙で終劇を迎える。その手紙は瑠果の命の使い所を想わせるのだ。

 

雨は感情を表現する。だから、印象的な作品に雨が多い。

抽象作品は鑑賞者の心に訴えかける。だから、如何様にも解釈があり、心をえぐる。

 

瑠璃という言葉にふたりの名前を感じた時、報われない想いに哀愁を感じた。

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理解しやすい作品は観ていて楽しい。しかし、圧倒的なセンスで鑑賞者を引きずり回す作品を好奇心は期待している。内容が意味不明で、何に感動しているのか理解できない様な、ゾワッと心を虜にさせる作品は魅力的だ。最近、そんな作品が少ないのは、時代が求めていない為なのだろうか。求めている作品を与えるのではなく、求める者を狂わせる様な魅力を秘めた作品を期待してしまう。嗚呼、甘美な狂気に惑わされたい。