読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

シッポノリンカク

映画好きで絵描き好きな曖昧模糊な記憶。又は、自由闊達な解説。或は、落書き。

先生も揚げパンが大好きです。:きみはいい子

社会

今週のお題「映画の夏」

 

※以下ネタバレ注意です。

みなさんは映画のエンドクレジットを最後まで見ますか?私はエンドクレジット中に、色々な感想や終劇後の展開を想像します。だから、エンドクレジットの選曲にはセンスを感じます。

“映画・きみはいい子”はエンドクレジットに短さを感じました。この映画の最後は受け手に委ねられます。ピアノの音色を聴きながら色々考えていたら映画が終わってしまいました。

 

新米男性教師、岡野先生のクラスは学級崩壊しています。会話の噛み合わない独居老人と自閉症の小学生、櫻井君。ネグレクトの母、水木とその娘。そんな3組の6月の日常が交わることなく描かれていきます。その描かれているフィクションの日常を観ているだけで鬱々とした気分になってしまいます。特に水木が娘を睨む目付きが痛々しく、虐待しているシーンは見るに堪えないです。その後、浴室に引き籠る母親と、それでも母親を求める娘に対してやりきれない気持ちでいっぱいになってしまう。この映画を鑑賞するにはそれなりの覚悟が必要だと思うのです。

 

雨の日の放課後、岡野先生は校庭で男子のクラスメイト、神田さんを見付けて声をかける。

男女平等だからクンやチャンを使わないで“さん”を生徒に使うらしいです。

いつも同じ服の神田さんは義父から5時までは帰るなと言いつけられているのです。神田さんは両親から、わるい子と言われ「どうしたら、いい子になれるのかな」と岡野先生に問いかける。しかし、岡野先生は答えられずにうつむいてしまいます。そんな2人は好物の揚げパンで心を通わせる。

その後、岡野先生は神田さんの家庭にネグレクトを感じ、行動するがカラ回りで終わってしまう。更に学級崩壊で生徒は暴れ回り、勝手に帰宅する生徒まで出てしまう。岡野先生の仕事熱心さに対する結果に同情して打ちのめされた気持ちになってしまいます。

 

挙句の果てに岡野先生は帰宅中に酔っ払い浮かれる彼女を見付ける。彼女は男性から肩に手を添えられ囁かれ照れている。絶望的な光景を目の当たりにしてまばたきすることなく見つめる岡野先生はその後、自宅のソファーで膝を抱える。燃え尽きた岡野先生が放心している。踏んだり蹴ったり、泣きっ面に蜂なのです。同情して悲しくなります。

そんな岡野先生に甥っ子は抱擁して「がんばって。」と背中を叩いてあげる。甥っ子の優しさが心にしみます。岡野先生は姉からの言葉で優しさの連鎖に気が付きます。

その二つのシーンから快楽の抱擁と幸福の抱擁を連想しました。

酒で理性を麻痺させて快楽に溺れる抱擁と、絆で結ばれた相手との幸福を感じる抱擁。

快楽は刺激的で一過性ですが、幸福は主観的で永続性があると思うのです。

そして、岡野先生は生徒達に“抱きしめてもらう”宿題を出す。

f:id:kimerateiru:20160817144901j:plain

 

翌日、岡野先生はクラスで宿題の感想と意味を語り合う。その事で教室に一体感が広がります。しかし、そのクラスに神田さんはいない。岡野先生は給食の揚げパンを神田さんに届けようと教室を後にする途中に自閉症の櫻井君のいる教室を覗きます。生徒達とその親達が見守る中に独居老人もいます。老人と櫻井君は奇妙な縁で心を通わせている。その教室で櫻井君が“歓喜の歌”を歌います。その歌が聞いていて何故かすごく心地良いのです。

それから、5時のチャイムをキッカケに岡野先生は神田さんの所へ走り出し、ピアノの音色が流れます。独居老人と櫻井君とその母親は幸せについて共感している。水木とその娘にも穏やかな時間が流れている。今までの鬱々とした雰囲気が報われていくようです。ピアノの音色と共に、散るはずのない桜の花びらの舞う演出が加わり、街中に穏やかな時間が流れている。初夏に桜が舞い散る。ここでエンドクレジットが流れれば幸せな気分に流されて終わるのですが、続きます。続いてしまうのです。ピアノの音色が止み、桜の花びらは消え、岡野先生が神田さんの家のドアをノックする。そしてエンドクレジットが流れる。

 

桜の花びらは散るとゴミになるから、桜の木は切られてしまうと冒頭のセリフが意味ありげに感じて、劇中ずっと気になっていました。

だからだろうか、桜の演出が消えた岡野先生の未来にネガティブな予感しかありません。でも、神田さんにとっては岡野先生と過ごした時間は桜が散る季節なのかなと思うと…。岡野先生の熱意が切なくて、たまらなく悲しくなってしまいます。

お盆に幼稚園児の姪っ子と遊んだので、この映画を観続けることがとても辛い事に感じました。都合の良い時だけ子供と遊ぶ私には実感できないけど、自分の子供が可愛いと思えなくなってしまう瞬間が日常には見え隠れしているのかもしれない。姪っ子にはこのまま元気で、健全に小学生へと成長してもらいたいと思う。もうね、幼稚園児は全力で体当たりしてきたり、無理矢理にでも肩車しようとよじ登ってくるから筋肉痛になっちゃったよ。この育児の毎日は本当に大変だと思うし、尊敬します。