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シッポノリンカク

映画好きで絵描き好きな曖昧模糊な記憶。又は、自由闊達な解説。或は、落書き。

暗室での魔法:ミッドナイト・イン・パリ

今週のお題「恋バナ」

 

※以下ネタバレ注意です。

♪パァ~ラパラパァ~~…。っと、トランペットの音色を背景にパリの景色が次々と映し出される。木々の中に佇む石造りの建物。その街並みを行き交う人々。落ち着いた夜景、そして雨でしっとりと輝いた街角。ファーストシーンの演出ですっかり映画の世界に惹き込まれてしまう。“ミッドナイト・イン・パリ”はそんな映画です。

 

小説家を目指すギルは、パリに移住したい夢を抱いている。パリの黄金時代に憧れる現代アメリカの脚本家です。生活に不自由は無く、おしゃれな女性との結婚目前のギル。でも、結婚を考えている彼女と、その価値観を分かち合えずにパリ旅行へ訪れます。そんなギルが真夜中のパリでタイムスリップしてしまうお話の映画です。タイムスリップ先は憧憬の時代パリ。ヘミングウェイピカソ、ダリも登場します。現代の作家が憧れの時代の人々に刺激され、新しい恋に落ちます。そして、この時代の芸術家も周囲に刺激され、恋をしながら自らの芸術を昇華している光景が描かれています。芸術の背後に恋心ありなのです。この時代の芸術家と主人公とのさりげない会話がとても興味深いです。この映画に登場する芸術家の人柄を知るキッカケになります。

個人的な事情ですが、藤田嗣治が登場していたら、もっと映画を身近に感じられたのだと、ちょっと残念でした。

 

翌朝、感動した彼は現代の彼女とも同じ時代を共有しようと行動しますが失敗におわります。ギルの言動は彼女には理解できない。ギルは妄想癖のある脳腫瘍患者扱いされてしまう。挙句の果てにクスリの乱用までも疑われてしまう。更に、彼女の両親から人間性を疑われて探偵を付けられ身辺調査されてしまう始末。哀しいね、ギル。

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とにかく鑑賞するだけでパリの黄金時代に浸れます。自宅で鑑賞する時は、スマホやインターホンを消音設定にして、カーテンで光を遮断した暗室をオススメします。鑑賞のお供にシンジャーエールをグラスに注ぐとシャンパンに感じられるかもしれませんよ。

パリの芸術家が沢山登場し、彼らの存在を感じる事ができます。ス~ッとパリという街が芸術家の彼らを育んだのだと感じてきます。真夜中のパリの灯りが印象的です。暖色の灯りが人々を幻想的に照らします。

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そして、ギルは結婚間際の女性と別れ、パリへの移住を決めます。その後、パリの時代を愛した女性と仲良くなります。その彼女の時代の愛し方に彼は惹かれたのでしょう。芸術の知識をファッションとしている女性より、芸術に存在する時代を理解した女性に共感したギル。幸せそうな2人に憧れます。

アートを楽しむ為に知識を必要とする時がありますが、直感で楽しむ事には勝りません。芸術には出会った瞬間に湧き上がる感情が在ります。色彩や曲線の美しさを単純に楽しんでしまう事は幸せな事です。その後、惹きつけられる作品の背景を知識として楽しめば、興味や愛着が深まると思うのです。瞬間的な感情は知識で濁らない印象だと思うので、とても純粋です。

 

黄金時代に美点だけが存在していた訳ではありません。いつの時代も芸術活動には、様々な批判や制限があるものです。でも、現在から過去を芸術として眺めた時くらいは、美点だけしか見えない視野狭窄が起きても良いのだと思います。

現在、パリの街角は黄金時代の面影を残しながら存在しています。面影を残す街角で彼らの息吹を感じたくなります。パリへの移住予定はありませんが、パリへと旅立ちたくなる映画でした。

 

さて、この映画を知るキッカケはある女性の方からのオススメでした。芸術を愛するなら観てもらいたい映画があると鑑賞しました。映画好きなステキな女性でした。

映画のワンシーンをおどけて演じてみたりする方は、所作の美しい方が多いと思います。彼女もその一人でした。生まれながらの女優なのですね。指先の仕草や憂いた瞳にフワァっとします。そんなフェティシズムを糧に、貧しい画描きの作画は捗るのです。でも、百万本のバラを集められなかった様子です。

その後、その方とは一緒に映画を観たり、美術館巡りなどして、感性を共有して楽しんだ時間がありました。しかし、小さなすれ違いが重なって恋人へと至りませんでしたが、この映画に出会えた思い出です。

ハァ~、恋はタイミングとフィーリングですな。

 

この黄金時代の芸術に興味がある方は、こちらも覗いてみて下さい。

 

kimerateiru.hatenablog.com