シッポノリンカク

映画好きで絵描き好きな曖昧模糊な記憶。又は、自由闊達な解釈。或は、落書き。

笑みより此岸の情緒:カルテット第3話

 

※以下ネタバレ注意です。

TBS火曜ドラマ“カルテット”の第3話目の事です。すずめちゃんの変貌が見所でした。

何事にも笑うチェリストの女性、すずめちゃん。寝坊しても、洗濯物が雪にさらされても、ランジェリーが暖炉に飛び込んでしまっても笑ってるすずめちゃん。陽気さに、どこか影を感じる女性です。微かに震える声に寂しさを感じます。

そして、男性の誘惑に対して笑顔を返しても、目が笑わない有朱(アリス)ちゃん。そんな有朱ちゃんが、すずめちゃんの所に訪れる。有朱ちゃんから男性の誘惑の秘訣は「人間を捨てる事です」と伝授されるすずめちゃん。ネコになって誘惑する事にキャッキャと笑い合うすずめちゃんから喜びを感じます。

でも、ネコに変貌しても別府君を誘惑することは出来ませんでした。

 

病床の老人と、仲間の服装で白黒のボーダーが被ってしまうシーンから、死を連想してしまう出来事が起こります。

更に、ボーダーを着た少年がすずめちゃんの所へ現れる。度重なるボーダー事件に興奮してニコニコするすずめちゃん。無邪気に笑うすずめちゃんが可愛い。

少年は、すずめちゃんの父が亡くなる事を伝える。亡くなる前に会って欲しいから一緒に来て欲しいと言う。しかし、すずめちゃんは会おうとしない。笑顔の消えたすずめちゃんは少年の誘いを断る。

すずめちゃんの過去には、父を拒絶する出来事があるのです。

 

その過去を知られる度に居場所を変えてきたすずめちゃん。そんな悲しい出来事を繰り返すうちに、微笑みを絶やさなくなったすずめちゃんを想像すると切なくなります。

親交ではない、相手の拒絶を決定的にさせない微笑み。愛想の良さを伝える為の処世術。蔑みの感情を抱いて来た人間に対して、敵対しないようにと一定の距離を保つ為の微笑み。陽気さではない、陰気な感情を覆い隠し伝えない為に、習慣として身に沁み込んでしまった微笑みなのでしょう。

すずめちゃんは、雨に濡れた子犬の様です。

状況によって、集団になった人間は悪意を増長させる事があります。自身の優生に酔いしれ、鬱憤を晴らす為に孤独な他者を攻撃してしまう。その悪意を集団になる事で分散させ、正当化してしまう。罪の意識を薄めようとする。歪んだ自己愛です。

雨に濡れ鼻を鳴らし見上げる子犬に石を投げてしまう集団心理に背筋が凍ります。

 

葛藤の末、すずめちゃんは父に会おうと病院に向かう。しかし、病院へと入る事が出来ない。病院の周囲をウロウロしている所をカルテット仲間の巻さんに出会う。そして、落ち着いて話をする為に蕎麦屋でカツ丼を注文する。父の亡骸に会う事を進める巻さん。すずめちゃんは紅白のボーダービキニのポスターを見付け立ち上がる。巻さんに背を向けて父の事を語るすずめちゃん。父に会う事に困惑するすずめちゃんに対して巻さんは軽井沢へ帰る事を決定する。血が繋がっていなくても仲間である事、居場所がある事を伝える巻さんの言葉に熱を感じます。

親子丼でなくカツ丼を食べる2人から、他人同士でも絆を結ぶ事が出来る事を感じます。紅白のビキニから祝いの喜びを連想するシーンです。

 

冬の軽井沢へ帰宅して、すずめちゃんはトラへと変貌します。冬の軽井沢でトラに変貌して別府君の唇を奪うのです。さて、どんな恋の展開が訪れるのか楽しみです。

その後、すずめちゃんのチェロでソロ演奏をするシーンがあります。細長い腕と身体でチェロを抱えるすずめちゃんから気高さを感じます。色気を感じるのは別府君とのキスの効果でしょうか。自身の居場所を確保して、過去から解放されたチェロの音色が印象的です。第2話での、別府君のヴァイオリンソロ演奏に似た感動があります。2人共どこか、心の解放を感じるソロ演奏です。

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このチェロ演奏のシーンに感動して、イラストを描きたい衝動が湧きあがりました。描きながら、この衝動はすずめちゃんの「ミゾミゾしてきた」って言うセリフに似た感情なのかなぁ…などと思いました。

 

孤独に脅えて微笑むすずめちゃん。居場所を確認して笑うすずめちゃん。笑顔に秘められた感情を想像すると、とても切ない気持ちになります。

チェロの大きな身体で奏でられる低音から伝わる安心感は、彼女の居場所の証です。

このドラマでは、過去に困惑しながら互いに支え合う人々に惹かれます。迷いながらも前向きに心を通わせ、絆を結ぶ人々にどうか報われて欲しいと願います。