シッポノリンカク

映画好きで絵描き好きな曖昧模糊な記憶。又は、自由闊達な解説。或は、落書き。

青空は続くよ、どこまでも。:ROOM

 

※以下ネタバレ注意です。

優しさについて考えてしまう映画でした。

 

映画冒頭は、信頼の絆を感じる2人が描かれています。走り回る少年と、彼に微笑む若い女性。しかし、二人の生活する環境に違和感を覚えます。喜々とした少年を軸に走り回る部屋が映し出されます。少年はとても短い時間で部屋を一周してしまう。そこは、とても小さな部屋です。その部屋で生活する2人が描かれているのです。その事に気付いた時、悲劇的な環境で幸福そうな2人を最後まで見守れるのだろうかと不安になりました。

映画“ROOM”は、7年間監禁された女性と5歳になった少年が描かれます。その少年ジャックは監禁中にその女性から出産されました。2人の強い絆に心が打ちのめされます。

 

でも、そんな悲しい感情はジャックの好奇心に救われます。

母親の脱出計画が成功して、ジャックだけが監禁部屋から外の世界へと飛び出します。

ジャックは初めて外の世界を体感します。鮮やかな色彩の木々や空と雲。その時感じた風、音、臭い。ドコまでも広がる青空を体感するジャック。彼の好奇心にあふれる表情を目にした時、悲しい気持ちは報われた気持ちになります。どうか、束の間の喜びで終わらないで欲しいと思いました。

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そして、ジャックの活躍によって母子共に監禁生活から解放され、本来の家庭へと帰って行きます。

 

その後、描かれるのは子供の好奇心と大人の自己嫌悪です。

新しい生活におびえるジャックの恐怖心は、人々との信頼によって薄れていきます。それから、彼の好奇心は次第に彼の世界を広げていきます。子犬とのふれあいや友情の芽生えが描かれています。

しかし、対照的に母親の世界は狭まります。自身の優しさ故に監禁された事、ジャックを出産した事。人として在るべき良識な思考や優しさが彼女を苦しめてしまいます。

 

そんな母に対して悲しむジャックの優しさが心に沁みます。

ジャックは髪にパワーがあると、頑なに散髪を拒絶してきました。その長く伸びた大切な髪をバッサリと切り落し、母へと送ります。

母をいたわるために、自分が出来る事を考え抜いて決断するジャックに強さを感じます。

そこには、絆が与える心の強さが描かれています。とても良いシーンなのですよ。

監禁中の出産が間違いではないと、ジャックが優しさに満ちて育った事で描かれています。

 

ジャックには監禁魔の血が流れています。その事を母親は否定し続けます。

しかし、監禁魔とジャックは母親という女性に執着します。同じ血の成せる行動なのかもしれません。その場に彼女しか居なかった為かもしれません。執着、愛着、愛情のぼんやりとした境界線の曖昧さに狂気を感じてしまいます。

監禁魔の執着の源は寂しさかもしれません。ジャックにも寂しさを感じます。でもその後、2人の執着の質は明らかな違いを描きます。ジャックの執着には寂しさに加え、強い優しさが芽生えた様に感じました。自身の髪を送るシーンで感じた優しさです。

母子間だけでなく、人々との心の交流が、その人々の心の在り方を変えていく。そんな希望を5歳の少年から感じ取りました。

 

とにかく、ジャックの心強さと優しさに惹かれて最後まで観てしまう映画でした。