シッポノリンカク

映画好きで絵描き好きな曖昧模糊な記憶。又は、自由闊達な解説。或は、落書き。

街の気配を感じて、:ブルックリンの恋人たち

 

※以下ネタバレ注意です。

“ブルックリンの恋人たち”は、感覚的な映画でした。

 

レスリーは事故に合い、意識を失い入院してしまう。そして、姉のフラニーは彼の意識を取り戻そうと、病室に彼の日常を再現しようとします。弟の日常を日記から感じ、ブルックリンを巡ります。

 

病室では、彼の五感を刺激して意識を取り戻そうとする風景が描かれています。パンケーキにかけるシロップの香り、港の波音や船の汽笛、彼の好きな音楽、フラニーの掌とその時の体温。あっ、食事が出来ない状態なので四感ですね。でも、ぼんやりと開いた口腔に流れ込む空気に含まれた味覚物質から、舌はわずかに刺激を受けているかもしれません。

意識を失っていても、網膜はまぶた越しに光を感じ、鼻腔は香りを、鼓膜は音色を、身体は世界を感じながら生きているのです。

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ラニーは、そんな日々の中で一緒に彼の意識を取り戻そうと協力してくれるジェイムズに恋をします。

レスリーの日常を見付け、集めながら共感し合い、惹かれあうフラニーとジェイムズ。

高級な街は必ずしも人を幸せにしないけれど、大きな自然やアート環境が感性を刺激する事はあるのだと思います。

 

レスリーとジェイムズはミュージシャンだから音色には敏感なのだと思います。小さな音色の共鳴に感情を揺さ振られて表現する。更に、全身の感動が芸術活動に影響を与えている事を感じます。

個人的な感覚なのですが、画を描く時は視覚より、皮膚感覚で得た情報の想起が強く影響を受けている気がします。指先で触れた微妙な曲線の起伏と弾力、その時の冷たさ暖かさ。

想像よりも軽い金属や重い木材など、見立てを裏切る質量を感じる事で本質を知る事があります。

 

パンケーキの香りで甘味を感じる。汽笛の音で海の広さを感じる。感覚をキッカケに感情が想起される。その感情に共感した人の感覚が刺激される。

感覚と感情の循環で感受性が育まれていく。

ブルックリンで、その街の病室で、優しさに囲まれたレスリーの心で起きた出来事に共感する喜びを感じました。